2011年4月29日金曜日

太鼓について

アフリカの太鼓といえば多くの人がジェンベを思い浮かべるだろう。マリやセネガルなどの西アフリカが発祥で、特に高音域における表現力の豊かさにより,モザンビークや日本を含め世界中に愛奏者のいる打楽器である。普通手で叩き、低音はドゥンと沈むような、高音はカーンと抜けるような音がする。
皮は主に山羊が用いられるが、大きいものだと牛を使うこともある。打楽器においてもっとも重要な特徴は皮の張り方だ。ジェンベの場合、皮を挟んだ鉄の輪に紐を通して、編み込みながら強く張っていく。
作る行程としては、まず木を削りだす。その木の上部に2つ、下部に1つ、皮を紐で張るための鉄輪を溶接する。次に山羊の皮を剥ぎ1日ほど水に浸ける。皮は脂肪を取るくらいで特に鞣したりはしない。そして木の棒で梃子を使いきつくきつく張っていく。最後に日光で乾かし、打面の毛を剃って完成。

対して東アフリカのモザンビークでは、木の杭を打ち付けて皮を張る(低音の太鼓は皮ひもで張るものもある)。ザンビア、タンザニア、ジンバブエなど近隣国の伝統的な太鼓はだいたいこの方法を用いる。日本の和太鼓も原理としては同じ。
ジェンベと違い一度皮を張ったら張り直しができず、湿気ですぐに緩んでしまうため演奏前に必ず火を焚き15分ほど炙る。初めて知ったときすごく儀式っぽいっていうか、なんか神聖な感じがしたんだけど、実際はそこら辺で拾ってきた段ボールとかビニールゴミなんかを燃やしていて、特に祈りを捧げるようなことはない。アフリカに来て感じたのは、とにかくフィジカルだということ。田舎のほうに行けば精霊信仰など原始宗教がまだ残っているようだが、首都圏や都市部ではキリスト教とイスラム教の影響で土着の精神文化はほとんど見られない。だが日々の生活様式や芸術作品をみても、もともとそんなものあったのだろうか、という気になる。少なくともアジアや中南米における信仰とは比較できないほど異なった感覚なのではないか。正直、よくわからない。だがここで肌と肌がぶつかりあい、肉が弾け骨が軋むたびに、この土地の血の鮮やかさがかいま見える気がする。とにかくタフでフィジカルなのだ。
という感じでこちらも一晩水に浸けた皮を、木の杭を石で打ち付けて張っていく。
音色は柔らかく暖かみがあり、それぞれの音域が織りなす調和とポリリズムは深い陶酔と高揚をもたらす。演奏には舞踏が、舞踏には演奏が不可欠で、曲の進行や展開に密接に関わっている。基本は木の棒で叩くが、手で叩くこともある。
参加しているグループで踊っている女の子たち。
練習は土日の午前で、間に30分ほど休憩を挟む。前半は準備運動を兼ねたアフロエアロビクス(的なもの)で、演奏はそれを盛り上げていくように1時間以上粘り強く引っ張る。後半に伝統楽曲を確認しながら練習している。ときどき地区の記念式典や結婚式など近隣の催事に呼ばれて演奏する。